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株式会社GEN

コラム

「新収益認識基準」対応のポイントについて

 

2022.05.30.

 

新収益認識基準とは
2021年4月から新収益認識基準の適用が開始されました。
新収益認識基準とは「収益認識に関する会計基準」のことを表します。
収益認識基準とは、売上をどのタイミングで認識し、どのように計上するかを定めた会計ルールのことです。
2021年4月から始まる会計年度より、上場企業や大会社では新しく設けられた新収益認識基準が強制適用になりました。

 

 

従来の収益認識基準について
従来の収益認識基準では、主に以下の3つの方法が採用されていました。
 ・現金主義:現金を受け取った時点で売上高を計上する
 ・発生主義:商品やサービスを提供した時点で売上高を計上する
 ・実現主義:商品やサービスを提供し、現金・売掛金・受取手形などを受け取った時点で売上高を計上する

 

実現主義による収益計上時期は会社によって異なり、以下の3通りの基準となります。
 ・出荷基準:商品を出荷した日をもって売上高を計上する
 ・納品基準:商品が顧客に届いた日をもって売上高を計上する
 ・検収基準:顧客が商品を検収した日をもって売上高を計上する

 

 

新収益認識基準について
日本の会計基準を国際的な会計基準に合わせる方針から、IFRS第15号の考え方を取り入れた「収益認識に関する会計基準(新収益認識基準)」が定められました。
従来の収益認識基準は企業ごとに出荷基準、納品基準、検収基準と、売上計上のタイミングが異なっていました。
新収益認識基準では、履行義務が充足されたタイミングに統一されます。

 

 

経理実務への影響
経理実務への影響は、売上発生時における収益の識別方法です。
従来の基準では、財やサービスが提供された際に、その取引額で売上計上する方法が一般的でした。
新収益認識基準においては、「履行義務」によって相手が受ける権利の額で収益を認識し、金額を配分することが必要となります。

 

 

履行義務とは
履行義務の定義は以下となります。
・履行義務:財またはサービスを顧客に移転する約束
・履行義務の充足:約束を果たしたということ

 

具体例)保証サービスの提供
例えば電化製品販売時に、2年間の保証サービスが付いてきます。
・履行義務:2年間に渡ってサービスを提供する
・充足するタイミング:2年間に渡り充足
保証サービスは継続してサービスを提供するため、2年間に渡って義務を充足することになります。保証サービスを売った時はまだ履行義務を充足していないため、収益を認識しません。2年間に渡って収益を認識することになります。

 

 

収益認識の5つのステップ
新収益認識基準では、以下の5つのステップを経て検討した金額、タイミングにより、売上を計上します。

 

ステップ 1 : 契約の識別
契約に含まれる、提供すべき商品やサービスの内容を把握する。

ステップ 2 : 履行義務の識別
契約に含まれる顧客に対する履行義務を把握する。製品の提供とその保守サービスが1つになった契約の場合でも、2つの履行義務と認識する。

ステップ 3 : 取引価格の算定
契約の取引価格を算定する。

ステップ 4 : 履行義務への取引価格の配分
契約の中に複数の履行義務が識別された場合、取引価格を各履行義務に配分する。

ステップ 5 : 履行義務の充足による収益認識
それぞれの履行義務を充足したタイミングで、収益を認識する。

 

 

ポジションペーパーとは
5つのステップの中で、特に重要なステップはステップ2の履行義務の識別になると思います。履行義務の識別を行うにあたり、各取引について分析を行う必要があります。
先ず、関係部署にヒアリングを行い、概要分析を行うことから始めます。
概要を把握してから、詳細分析を行います。詳細分析の結果を使って、会計方針を定めていきます。詳細分析から定めた会計方針を文書化したものを「ポジションペーパー」と呼びます。
ポジションペーパーは、会計監査人等、社外の方々と会計方針の議論をする際に、非常に重要な書類となります。

 

ポジションペーパーには、一般的に以下のような情報が記述されます。
・対象となる取引
・取引の詳細(取引形態、年間売上高等)
・会計基準の抜粋(どの論点を判断基準としているか)
・分析結果(分析方法とその結果)
・結論(どういう会計方針になったのか)

 

 

まとめ
新収益認識基準への対応は経理部門だけで対応できるテーマではありません。
特に重要なのが経理部門、営業部門、契約管理部門、IT部門の連携です。関係部門との協力体制を構築し、部門横断的に進めていくことが必要だと思います。

 

H.

 

 

参考
国税庁HP 「収益認識に関する会計基準」への対応について

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hojin/kaisei_gaiyo2018/02.htm

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