経理は整数なり
2025.01.21.
タイトルはかの有名な数学者ピタゴラスの「万物は数なり」から拝借しました。
なお「経理は自然数なり」とどちらにしようかと迷いましたが、減価償却累計額などは資産のマイナスで表現するので「整数」を採用しました。
ピタゴラスの逸話に関しては、紀元前ギリシャの人物なのでどこまでが本当でどこからが創作か怪しく、又私の解釈が間違っているかもしれませんが、俗説では「全ての数は分数か整数で表現できる」と考えていたと言われています。
ルートで表現される数などの無理数はピタゴラスの思想に反した数字で、無理数の存在は彼の人生に一波乱を起こしたそうです。
(ちなみに「√2」は無理数ですが、これがピタゴラスの定理で導かれる代表格の数字(2辺が1の直角二等辺三角形の斜辺)なのは面白いですよね。ただ実は、この定理を発見したのはピタゴラスではないそうです。)
さて、なんでこんな話をし始めたのかというと、
ピタゴラスが無理数を嫌ったのと同様に、経理職である私が嫌いな数字(金額)というものがあります。
何なら、私はピタゴラスよりも更に心が狭いです。
私の嫌いな数字(金額)。
それは「小数点以下が出てくる数字(金額)」です。
逆を言うと、「全ての数(金額)は整数で表現してほしい」と考えています。
理由は「(日本円では)金額は必ず整数」だからです。
100年前なら、円より更に細かい金額の銭を使ってたかもしれませんが、現代日本では金額の最小単位と加算単位は1円。日々の買い物も、簿記試験の解答も、有価証券報告書も、金額の表現であれば小数点以下の数字が表示されることはないはずです。
消費税などの税率を計算するときや、為替の計算は、少数点以下の数字が出てくることがありますが、
それらもすべて金額にするときは切り捨て(or切り上げや四捨五入)がされていて、最終的には整数で表現されているはずです。
これを念頭に置いているか置いていないかで、Excelやスプレッドシートなどで経理関連資料の作り方が大きく変わると思っています。
Excelやスプレッドシートには便利な関数があり、「使えると業務効率化につながる」関数に、VLOOKUPやIF関数などがよく挙げられます。
それらの関数も使えると本当に便利で、覚えていて絶対に損はない関数なのですが、
個人的にお金周りの仕事をする方に心に留めて頂きたい関数が「ROUND(ROUNDUP、ROUNDDOWN)関数」です。
ROUNDが数字を四捨五入、ROUNDUPが切り上げ、ROUNDDONWが切り捨てをしてくれます。
経理の方は、よく消費税の計算をExcel上ですると思いますが、
この時に「ROUNDDOWN関数(消費税なので切り捨て)」を使って計算しないと、
複数の明細の消費税を合計したときに「目に見える金額の合計額と、Excelで合計したときの金額が違う」ということになります。
イマイチぴんと来なければ、よかったらこちらを実際にExcelなどで試してみてください。
税抜298円のものを10回別々に買ったときをイメージしています。
①「298」をA1~A10セルとD1~D10セルに入力
②B1セルに「=A1*1.1」を入力して、B10までプルダウン(又はコピーペースト)
③E1セルに「=ROUNDDOWN(E1*1.1,0)」を入力して、E0までプルダウン(又はコピーペースト)
④B11セルに「=SUM(B1:B10)」、E11セルに「=SUM(E1:E10)」を入力(B列とE列のそれぞれの合計値)
恐らく、結果はB11セルには「3278」(と小数点以下)、E12セルには「3270」が表示されると思います。
同じ率をかけて計算しているはずなのに、ROUNDDOWN関数を使うか使わないかで結果が大きく違ってきます。
当たり前のように聞こえるかもしれませんし、そんな細かい話…と思うかもしれません。
ただ、銀行員の方が残高1円ずれたら行員総出で1円硬貨を探さなければいけないように、
経理や会計の金額も、Excelの金額と会計帳簿の金額が1円ずれたら原因を全力で探さなければいけません。
引当金などはいいのですが、現金預金絡みは原則1円でもずれる、ということはないからです。
こちらを念頭に置かないと、「請求書100枚発行したけれど、実際の入金額とこちらで合計した金額が違う」とか「給与から税金を控除したけれど、実際に控除した金額とこちらで合計した金額が違う」ということが結構起こってきます。
実際に自身が経理職についたばかりの頃はこれが原因で、「担当部署からあがってきた数字と会計データが違う…でもなぜか分からない…」と2、3時間迷ったりもしました。(Excelデータで提出してもらえればまだいいのですが、紙の資料の時は本当によく頭を悩ませていました…)
少し熱くなってしまいましたが、
経理職の方、又は金額関連の資料を作成する方、勿論GENのチームメンバーも
小さいことですが、こういった金額と数字の性質を理解して資料を作って頂くと、結構な生産性の向上に繋がるかなと思いこの話をさせて頂きました。
少なくとも、ROUND関数を使って私に資料を提出して頂くと(口では言わないかもしれませんが)「おっ!」と喜び資料を拝見させて頂きます。
そしてここまで言っておいてなんですが、面倒かつ細かい関数の使い方ではあるので私自身もこれを省略して資料を作ることは多々あります。最後は自戒の念で締めさせて頂きます…!
Y.H.
※補足
①経理職としては小数点以下の数字は嫌いなのですが、個人的には無理数は大好きです。円周率、ネイピア数などは絶対的に存在する神秘の定数だと思いますし、ピタゴラスの定理で√を見つけてはニヤニヤしています。
②あくまで金額に絞った話で、分析資料などで「比率(%)」などが出てくるときは勿論この限りではないです。